演出より

時代を越えて、現在に通じる作品がある。佐藤信の『阿部定の犬』がそうだ。
舞台となるのは、概ね昭和十一年の東京市日本晴れ区安全剃刀町。夢と現実の狭間に浮かび上がった町。
その町に、好いた男のちんぽこを切りとった女が現れる。 小さくなった恋人を風呂敷に包み、オペラ通り、角田川、女は安全剃刀町内を駆けめぐる。女の名前は「あたし」。町の秩序を破壊する、ひとりぼっちのふたり連れ。
この上演を通して、「二・二六事件」や「阿部定事件」が起きた「昭和」という時間を現在の時間として経験してもらいたい。未だ終わらぬ「昭和」を再発見すること。それが出来る舞台作品が『阿部定の犬』である。